体育科卒銀行員経由のアントレプレナーのreport

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大塚家具社長の話

事業承継を問う  
 〜2016.6.30.日経産業新聞トップフォーラム
東京は大手町、日経ビルにて上記セミナーを受講したレポートです。  

千本倖夫 氏 私は初めて知りましたが、稲盛和夫氏とKDDIを創業した方。ビジネスのHappy exitについて学びました。 千本氏はもともと電電公社の部長職で電話通信料が当時アメリカの10倍という現状をおかしく思い、稲盛氏にビジネス協力を請う。2000億あった京セラの内部留保の1000億を投資すると思って出資してもらえないかという無謀な願いに対し稲盛氏は、日本の通信網の発展という大義を感じ事業をスタート。 稲盛氏といえばJALの再生の際、夕食はセブンイレブンのおにぎり3個で済ませ、12月30日まで働き、元旦も午後からは働くという仕事の鬼。 創業当時は人の10倍準備をし、500ページの事業計画が天然色(カラー)で見えるようにせよと言われ続け今日のKDDIはあるとのこと。 創業した際に出口(exit)についても考え、IPO(上場)を達成し、出資者にリターンすることも明確に描いた。 金儲けではなくミッションに共感し、ソニー盛田昭夫氏もポケットマネーで5億を出資し、のちに上場後200倍の1000億になった。 千本氏はその後、イーアクセス、現在のワイモバイルを創業し、後にM&Aで売却、現在はレノバ会長。 日本はM&Aと言うと、企業買収、ライブドア、後のリーマンショック、という悪いイメージがあるが、シリコンバレー(アメリカ IT企業の一大拠点)ではM&Aで自分の会社を買ってもらうことは人生の成功者 (Happy exit)とされている。  

大塚久美子 氏 言わずと知れた大塚家具社長。一番前の席で聞いていたのでその距離数メートル。さてなぜもめたのか!? 久美子氏が1歳の時、前社長が法人化。実は家業としては2代目だったとのこと。元々は桐タンスの製造販売、つまり加茂市と同じような産業だった。前社長は2人兄弟で兄が職人、弟である前社長が経理と販売、小学生の頃には既に帳面をつけていたとか。 会員制の導入の狙いは、当時の円高規制緩和バブル崩壊、と早くから海外調達をしていた大塚家具にとっては勝負しやすい環境だったにも関わらず、値崩れを恐れる同業他社、メーカーからの圧力があり、それを回避するために、「会員だけの特別価格」という体で売り出すことにあった。 衣食住と言われるが、衣→若者も随分TPOをわきまえているし、食→飽食の時代、住だけがまだ取り残されているのではないか、という思いのもと、住環境の充実によるQOLの向上、自分という存在意義の確認、自尊心を享受、このことをミッションにしているという。それがなければ自分が社長をやる必要はないし、そもそも中価格、高価格の家具などいらないと信念が見えた。 なかなか突っ込んだ話にならず、質疑応答で 「聞く限り理念は素晴らしい、お父様とそれほど理念に差異があるとは思えない。ではなぜあれほどもめたのか。」 との質問に対し、 「ビジネス上の考え方に差異はなかった。ただ取り巻く利害関係者の様々な想い、ここに本質があるのではないか。」 とのこと。上場企業ともなると一族ではないNo2、No3の人事など、この辺りが難しかっただろう。 全体としてはあまり深い話には及ばなかったが、業績の下方修正による株主に対する責任感は流石上場会社社長。 大塚久美子氏、私はいい人に見えたし、家具も確かに良いものを取り扱っていると思えた。  

日本M&Aセンター業界再編部長
実は今回ノーマークだったセッション。でも一番勉強になりました。M&Aの99%は売手主導だそうです。 日本M&Aセンターの年間取扱件数は420件、2位の某銀行の100件を大きく引き離し、M&A実績において堂々日本一の会社である。売上も2008年の30億から現在は150億の会社に成長している。 講演者は京都大学時代に学生の人材派遣業、ディズニーランドのイクスピアリ横でチーズケーキ屋を経営した元ベンチャー企業社長。大学卒業後同社に就職し、30代前半の若さで部長という超エリート、渡部恒郎氏。 M&Aは買い手の積極性がとかく注目されがちだが、成功しているM&Aは100%売手主導。なぜならM&Aで事業拡大を狙う企業にとって、売手から悪く思われてしまっては次のM&Aにつながらないいためだ。場合によっては売手側の従業員の方が好待遇だったりする例もある。 また最近は売手の経営者が自社株は手放すけれども経営には引き続き参画するという例も非常に増えてきている。この源泉は会社、業界をよりよくしたいとい双方の強い想いがある。例えばココカラファイン、今や売上  4000億の大企業であるが、新潟県ドラッグストアチェーン大手のコダマ薬局をM&Aをしたのは記憶に新しい。このココカラファインの役員にはもともと、ココカラファインに自らの会社(10億)を売った経営者がジャンプアップし、経営参加をしている。 また従業員目線で考えると、社長70歳、大きな声では言えないが 「社長が死んだら誰が社長やるの?」「この会社あの社長いなくなったらどうなるの?」 という大きな不安があるという。それを大企業がM&Aで買収してくれたら福利厚生面等での安心感は大きく、だれも辞めないという。社長にとってはなんとなく悲しい気持ちもあるかもしれないが、企業側にとっても新卒採用をする際にブランド力、規模等、学生にアピールしやすいというメリットも大きい。 420件の実績のうち、売手からの依頼によるものが99%ということであるが、では売手サイドにとって、自社に買い手がつくかどうかの判断基準は何か。三つだという。 〇同業大手10社と比べて売上の伸び率はどうか 明らかなマイナス乖離がある場合は商品価値が既にない可能性あり。 〇同業大手10社と比べて利益率はどうか 利益率が高ければ逆に買収する側の価値がある可能性あり。 〇新卒採用が続いているか いわば消費者の目ともいえるため ここで私が挙手をして質問。 Q「畑違いの会社同士のM&A実績はあるか」 A「ほぼない。双方の想いが通じないと到底成立しない話であるため。」 ただし想いに共感が生れた畑違いの例として、居酒屋が酒蔵をM&A、リフォーム会社が戸建会社をM&Aなどがあった。 またM&Aの後に失敗する例としてはという質問に対して。コンサル会社のアピールのためにデフォルメされているだけでしっかり事前に協議すれば、元々優良企業であるので業績が落ち込むことはない。しっかり、とは  No2の人柄、その奥さんの好みに至るまで詳細にとのこと。決算書だけで見えることは一切ないのだという。 ある会社の事業承継において、自らもベンチャー企業を立ち上げた息子が固辞し続けた家業の承継を引き受けると言い出した。これに対して親である創業者は 「お前がやりたいだけならやめなさい。社員のためになると思うならやりなさい。」 そう言い、息子は3か月悩み承継することをやめ、その会社はM&Aで売却されたという。  

「考察」3人の話に明確に共通していたのが仕事に対する「想い」、「ミッション」の強さでした。ここがぶれないので絶え間ないエネルギーが湧いてくるのだと感じました。