体育科卒銀行員経由のアントレプレナーのreport

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ライフシフト ~100年時代の人生戦略~

ライフシフト 

~100年時代の人生戦略~   

グラットン/アンドリュー・スコット 池村千秋 訳 

 

  

大切な次世代に向けた書籍としてとらえました。参考になれば幸いです。 

 

今の子どもたちの生活は私たちの子どもの頃とはまるで違う。大人が目をむくようなテクノロジーの数々を当たり前ととらえ生活している。そして彼らの大人時代も今の我々とは全く違うものになる。 

人口学者によると、2007年に生まれた日本人は50%の確率で107歳まで生きるという。 

1914年に生まれた人が100歳まで生きる確率は1%にすぎない。今我々の周りに100歳以上の人がそれほどいないのはそのためだ。 

しかし、平均寿命(ベストプラクティス平均寿命)をグラフ化してみると、きれいな右肩上がりになっている。従って今の子どもが100歳以上生きる可能性はかなり高い。ではあたなはどうか?10年ごとに平均2,3年ペースで上昇しているので、1997年生まれの人は101から102歳ということになり、1987年生まれの人なら98から100歳ということになる。 

イースト菌やマウスの寿命を延ばすことはすでに成功しており、臨床実験まで進むにはまだまだ先だろうが、それでも科学と知と大規模な投資がなされた場合、大きなことが成し遂げられてきた人類の歴史からすれば、より健康で長生きする時代が来ると思った方が良いだろう。 

1945生まれの人は、寿命的に75歳くらいで亡くなっている。紆余曲折あれど公的年金は充実し、企業年金もあった。ちょうどよくできていたのである。 

しかし1971生まれ、1998生まれの人はそうはいかない。人口構造上、1人の高齢者の年金を昔は10人で支えていたけれども今は、、、というのはよく聞く話題だ。 

受給する人の方が働き手よりも多い、言ってみれば手の込んだネズミ講の様相を呈し始めている。これまでの世代は納付した金額に対して、あまりに多くの給付を受けてきたのだ。しかしネズミ講は新しく加わるメンバーがいないと維持できない。出生率が下落している先進国では維持できなくなってきている。 

特に高齢高額所得者は老後の生活資金の源としての公的年金の役割は縮小していくと覚悟すべきだ。例えばイギリスの高所得者の年金は、2000年には最終所得の35%を維持していたが、2060年には20%まで下がると予想されている。 

企業年金の改革のスピードは遅々として進まない公的年金改革とは対照的だ。1987年にイギリスで企業年金に加入している人は810万人いたが、2011年には290万人に減り、アメリカでは企業の確定給付年金を利用できる人の割合は、1983年には全体の62%だったが、2013年には17%まで落ち込んでいる。 

平均寿命が短ければ45年働いて(65歳退職)、10年老後期間(75歳で亡くなる)。それであれば現役期間5年で老後の1年分の蓄えをすれば良いことになる。しかし平均寿命が伸びれば、45年働いて老後期間が20年、30年となってくる。そうなると老後への蓄えへのテンションが高くなるのは当たり前だ。そこに前述の年金減少、企業年金カットの追い打ちがくるわけだから、長く働くことは必然だろう。 

そして言うまでもないが共働きの時代だ。OECDの計算によれば大人2人の世帯に必要な所得は大人1人の1.5倍にとどまるという。経済効率が良いのがよくわかるだろう。 更に長く働くといっても、数年の話ではない。平均寿命が75歳なのか100歳なのかでは下手すれば勤労期間が20年延びる計算にもなる。 

1985年マサチューセッツ工科大学の研究は、この勤労、教育、老後という3ステージを掲げたライフサイクル仮説でノーベル賞を受賞している。しかしどうだろう、3ステージの生き方は既に耐用年数が切れているのだ。 

〇産業の新陳代謝とスマートシティの台頭 

100歳まで生きることを考えた時、産業の新陳代謝にも目を向ける必要がある。 

1910年と2000年とでは雇用の内訳が変化している。 1920年代アメリカの代表的な株価指数S&P500(アメリカの時価総額ベスト500)の構成する企業の存続年数は平均67年と長かったが、2013年この年数は15年に短縮している。産業の興亡が活発になるということは、昔のように一つの企業で長く勤め上げることが難しくなることにつながるだろう。 

また雇用体系の変化とともにスマート・シティが台頭してくる。2010年、世界全体の都市生活者は36憶人だったが、2050年には63憶人になると見られている。毎週130万人が都市に移り住む計算だ。なぜか。インターネットの登場で「遠さ」の弊害の問題はなくなったかもしれないが、「近さ」の価値はむしろ高まっている。質の高いアイデアと高度なスキル持ち主のそばに身を置くことの重要性が高まっていることの表れだ。アメリカではデトロイトのような工業地帯は衰退する一方、サンフランシスコ、シアトル、ボストンなどのスマートシティは繁栄している。高いスキルを持った人材が集まれば、企業はおのずとその町に引き寄せられ、高い賃金に誘われて更に多くの高スキル人材が集まる。いわゆるぶ厚い市場の効果が生まれる。そして社会学で言う「同類婚」が増えるわけだ。自分と教育、所得レベルが近い人を結婚相手に選ぶ傾向が強まっている。 

エクスプローラーのステージ 

エクスプローラー(探検者)とは、興奮、好奇心、冒険、探査、不安といった要素だ。エクスプローラーはいつの時代にもいた。生涯を通じて探検と旅を続け、3ステージの人生から脱却しようとする。一部の国では高校卒業後のギャップイヤー(大学入学を1年間遅らせて長期の旅行やボランティア活動などを経験する期間)が人生のステージとして定着している。 

周囲の世界を探査し、そこに何があり、その世界がどのように動いているか、そして自分が何をすることを好み、何が得意か発見していく。新しい町に移ってその土地の人たちと知り合ったり、知らない国を旅して自分の生き方について考えたりといった具合だ。このような手足を伸ばし自由を謳歌することは、人間を人間たらしめている要素と言っても良い。 

机上の知識だけではなく、実際の問題解決能力を培うような能力、優良な人間関係を築く能力。エクスプローラーは100年ライフを生き抜くために人生における必要なステージにもなってくるだろう。 

 

 

「まとめ」 

なんとなく85歳くらいが寿命なのだろうな、と思っていましたがそういえば最近の人を見ていると10歳は昔に比べ若い気がします。100歳まで生きる人生はどうやら本当にくるのでしょう。そして65歳できっぱり退職することの難しさについても感じました。皆さんの会社の従業員さん、70歳、75歳まで雇用していくイメージは湧きますでしょうか。またはご自身がそういった年齢まで仕事を続けるイメージはできますか。こういった社会的な要請がじわじわ押し寄せる時代がくるのでしょう。 

また次世代に向けて、人生のステージをどうイメージさせる必要があるのでしょうか。この本にはそのヒントが示されていたように思います。 

特に印象深かったのがエクスプローラーのステージです。通わせていいただいている会社のお子様、あるいは皆さんもそうだったかもしれませんが、学校を卒業して即一族の会社に就職される方よりも、いわゆる修行に出てから自社に戻るケースが多いように思います。また海外留学を経験されている方も多いのではないでしょうか。これもエクスプローラーのステージの一つなのでしょう。 

ここにどういった目的を持たせるか、または特段の目的を持たせず「跳ね回る」ことを目的とするのか、示してあげることは非常に重要だと感じました。 

そしてこのエクスプローラーは誰にも与えられる人生のステージではないことも事実です。 

100年ライフをいかに生きるか。自分の人生、自分の子どもの人生について考える良い機会になりました。