体育科卒銀行員経由のアントレプレナーのreport

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組織の潜在能力を引き出す変革リーダーシップ

〜日産と横浜F・マリノスの改革を支えたもの〜

日産自動車(株)執行役員 

先日宮崎シーガイヤにて、表題の講演を聞いてきました。カルロスゴーンの右腕と言われ、ガイヤの夜明け等のメディアへの出演、マリノス優勝時には一日に2000通のメールが来た、そんなエピソードをお持ちの方です。

今、企業を取り巻く環境は厳しく、例えばエアバックのタカタ、自動車部品においては超大手だが、一発の

リコールで倒産、そして東芝の現状に、シャープは外資にテイクオーバーされる。つまり変化に対応できないと淘汰される時代だ。

生き残るためのキーワードは「THE POWER FROM INSIDE」組織の中に眠っているパワーを呼び起こす、である。人、組織の能力は無限大で金脈のように、気づかなければそれまでだが、気づくとどんどん湧いてくる。

いかにリーダーが変革スキームを構築するかだ。

1980年代、日産33兆、トヨタ35兆、大きく離れてホンダというのが構図であり、日産は最強のナンバー2だった。しかし、バブル経済で過信し、過剰な設備、人員、借入によって完全にその勢いは失墜。

ダイムラークライスラー、ベンツ、フォードとの合併話も先方から破談にされる有様で、そんな中欧州では中堅のルノーに手を借りたというが歴史。そこでコストカッターとして登場したのがC.ゴーン。

彼が来てからの日産のV字回復は周知の通り。1999年からは売上で10数年前の2倍、利益に至っては10倍にまで押し上げることに成功する。だが社員は一緒だった。

このV字回復のエンジンとなったのが、「CFT」CROSS FUNCTIONAL TEAM。

9つのチームに分け、徹底的にコストの無駄を洗い出し、全車種同一の部品を使用する等で資金を捻出し、浮いた資金を成長分野に投資した。

このチームは社長直通のチームで、メンバーと社長は月に1度のミーティングを行う。ゴーンはひと月4週のうち、1週しか日本にいないので、その1週で9つのチームとミーティングを行った。本気さが違ったわけだ。

リーダーが本気にならないと組織にはいろいろな抵抗勢力があるので長続きしない。

そしてチームの人選については、「30代前半」、「経営に対する反骨心」、「各部門のエース」を収集した。全社プロジェクトとなると不要な人材が集まることがあるが、それでは影響力がない。出世コースであることを周知した。さらに各部門だけが良いのではなく、全体としてのベストアンサーを妥協せずに検討する。自分の庭先をきれいにして、気づけばゴミは隣の家に、では意味がなく、部分最適ではなく全体最適を目指した。すなわち縦糸に横糸を通す、CFTとは「部門横断チーム」ということになる。

このやり方が組織の基本だ、そう学んだ若手が上に上がるとその組織は強い。岡目八目という言葉がある。将棋をしている二人を見ているたくさんの人がいて、ある一手を指すと周りが「違うだろ」と指摘する。周りの人間の方がよく見えていることがあるということだ。

余談だが、この考え方と真逆なのが世界最強と言われる海兵隊。彼らは入隊の際の心理テストで同じタイプの

人間で構成されており、金太郎飴のように思想が全く一緒なのでぶれがなく、仲間が捕虜になったら命がけで助けにいく団結力を誇る。その代わり広がりは見せない。いわば一つの円なのである。

CFTはそうではなく、様々な円が重なり合って広がりを見せる。つまりダイバーシティ、多様性の容認だ。

さらにこの状況での課題はまとまりのなさということになるが、これに対してはコンクルージョン、受け入れること、そして議論に妥協しないこと。ダイバーシティコンクルージョン。その例として、車の購入に与える女性、奥様の影響力は70%というデータから、女性の感性を受け入れるために女性を積極的に参画させた。

こんな経験を経てマリノス社長となり、社員の質も日産本体よりも落ちる中、全く同じ手法で改革し、時には選手に地域活動に参加することの意味を説き参加させ、結果的に観客動員数、結果ともに素晴らしい成果を挙げた。